もう十数年前の話。
Mobage,GREEが全盛期の時代にソシャゲ開発会社に入社しました。
学生の頃からゲームの開発に携わりたいと思っていた自分としてはソシャゲとはいえゲーム関連会社に入社できたのはめちゃくちゃ嬉しく思ったのを覚えています。
入社オリエンテーションの際に社長とお話しする機会があったのですが、その時に「ゲーム会社に入社できて嬉しいです、頑張ります!」と意気揚々と伝えたところ、
「うちはゲーム会社ではないです、サービス提供者です。間違えないように」
という旨のお言葉が返ってきました。
その時は「はい、すみません・・」的な返答をして飲み込み、その後数年間はその言葉の真意を意識することなく開発業務を行っていました。
ゲーム会社ではなく、サービス提供者、の今だからわかる真意
2012年あたりのソシャゲはゲームとしての意義は薄く、主戦場もwebブラウザで、webサービスの延長でした。
ユーザーに提供する面白さよりどう射幸心を煽るか。
いかに効率よくKPIを達成できるか。
工数を圧縮し、最大限の売り上げを生み出すか。
一部の優秀なプランナー以外は当たり障りのない仕様をあげてきますが、売り上げが出ればそれが正義です。
出せば売れる時代もあり、ゲームの見た目をしたwebサービスを量産していただけです。
当時社長が上記の思想で「サービス提供者」と言ったかは定かではないですが、おそらくそこまで外れてはいないでしょう。
時代が変わりスマホアプリが主流になった後の苦悩
その数年後にはスマホが浸透し性能も上がり、スマホアプリが主流になりました。
当時一緒に働いていた方々は散り散りに転職していき、大半はweb系の会社に戻っていく人も多かったです。
結局は稼げるから参入してきたという方も多く、本気でゲームを作りたい人は割と少数だったのかもしれません。
(少なくとも自分が働いていた職場では)
とはいえ苦しいのが、ソシャゲの開発を経て未だに業界に残っており、かつ真に面白いゲームを作りたいという人ではない場合。
単なるサービス提供者の思想では業界的に厳しい
現在でもまだ現場で働いていて、本来提供するべき面白さ、よりもどうしたら効率よく売れるか、が意識されているように思います。
すでに売れているタイトルの模倣だったりエンジンの流用だったり。
もちろん会社としてゲームを作っているわけなので、売れるものを作るのは当然のことです。
それで給料を得て生活をしているわけなので、あーだこーだ言えるわけでもありません。
それでも数あるゲームの中で選んでもらえるような、斬新なアイデアや新しい価値や体験を提供した先に売り上げがある、という意識でゲームを作っていきたい。
ゲーム開発とは、そしてサービス提供とは
ゲームもサービス提供の一種だと言われればそれまでかもしれませんが、ゲームにはゲームの、そうたらしめる要素があります。
単なる札束の殴り合いではなく、純粋に感情を揺さぶり熱中させるギミックやビジュアル、演出、音楽など、そういった要素の総合芸術とも言えます。
これをやると工数が膨らむし、ユーザーにとって必要ないので実装しない、と判断した一つの要素が、本当はそのプロダクトのコアな魅力になり得るかもしれません。
そう言った積み重ねがプロダクト全体の魅力になり、ファンを増やし、ゆくゆくは会社の信頼や信頼や期待に繋がっていきます。
そんな中でも尊敬できる人たちがいた
とは言え、そんな環境でも面白いゲームを作ろうとしていた人たちもちゃんと存在します。
自分がただのワイヤー通りのデザインを上げたら、「この画面は面白くなさそう」だとしっかり伝えてくれるディレクター。
自分がこの案でいけば面白くなりそうだと提案した、とは言え売り上げには直接的に繋がらないデザイン案を楽しんで実装してくれたフロントエンジニア。
そう言った人たちが、ゲームを作る上での今の自分の思想になっているのは確かです。
心から面白いと思えるゲームを作り続けたい
ふと昔の話を思い出して書き殴りましたが、これらもユーザーにしっかり面白いと思ってもらえるようなプロダクトを作っていきたい。
十数年ゲーム開発に携わってきましたが、開発中に熱中し自分も楽しみながら開発できたこともあり、それが何よりの宝です。
これからそんな開発チームに巡り合えるのが何度あるか分かりません、もしかしたら待っているだけではなく自分で掴みにいく必要があるかも知れません。
単なる食べていくための仕事としてではなく、心から面白いと思える体験を提供していけるように精進していければ。