アプリゲームの制作を行う上で意識すべき「没入感」。
なぜゲームには「没入感」が必要なのか、あったらどうで、なければどうなのか。
また、UIデザイナーがこの「没入感」に関してどうアプローチできるのかをまとめます。
そもそもゲームにおける没入感って何?
まず、ゲームにおける没入感について。
本来没入感のもつ意味とは、対象や状況に意識を集中していて、他のことが気にならなくなること。
ゲームに置き換えると、下記の2つに置き換えられます。
ゲームにおける没入感
- ゲームの世界観に深く没入している状態
- 体験に没入している状態。
ゲームにおける没入感はこれらを演出するために意識すべきことと言えます。
アプリゲームに没入させるとどう良いのか
こと、アプリに関していうと、ゲームに没入している状態を作り出すことでいくつかのメリットがあります。
ゲームに没入させるメリット
- 世界観、または体験に没入させることで、アプリの滞在時間が伸びる
- そのゲームの世界観のファンになる
- そのゲームの体験を何度もプレイしたくなる
ゲームの没入感を高めるということは、結果的にゲームに触れる機会が増え、プレイしていない時間でもゲームのことを考えてしまう状態を作り出せるということです。
アプリでいうと、プレイしている滞在時間が伸びることで課金に繋げられるタイミングも増え、結果KPIに影響します。
また、コンシューマーであっても、その世界観や体験のファンになってもらうことで、次回作へ繋げることも可能です。
ゲームにおける没入感をデザインするには
それではここから、前述したこちらの要素に関してまとめていきます。
- ゲームの世界観に深く没入している状態
- 体験に没入している状態。
ゲームの世界観に深く没入させる
世界観設定やシナリオ、キャラクターデザイン、その他ビジュアルデザインなど、その世界を感じさせる全ての要素。
それらの要素をゲーム全体に散りばめて世界観に没入させます。
世界観設定やシナリオであれば、ディレクターやプランナー、シナリオライターが設定することが多いです。
また、キャラクターデザイン、背景やアイテムなどは2Dのイラストレーターや、場合によっては3Dモデラーが対応したりします。
では、UIデザイナーの場合はどうでしょうか。
実はUIデザインも立派な世界観表現をするための要素です。
世界観設定に深く没入させるために大事なのが、「ゲーム全体の世界観設定から意識をそらすような要素を排除すること」。
これがあると、せっかくシナリオやイラストでしっかりと表現した世界観設定が台無しになります。
没入した状態から意識をそぐことがないように、UIデザインもしっかりとその世界観設定の表現のラインに乗せて制作する必要があります。
例えば、下記のCEDECの2020の内容。
『星のカービィ』シリーズでゲームとプレイヤーを繋ぐ “おもてなしの心”のUIの作り方 【CEDEC 2020】
カービィのUIで大切にしている伝統やルールも素晴らしいのですが、中でもカービィの世界観を画面全体で表現するゲームとしてプレイヤーを引き込む魅力にあると感じます。
どの画面でもカービィの世界観を感じさせる要素が組み合わさっており、その世界観設定から意識を逸らす要素が見当たりません。
細かいところまで気を配られた、細部までその世界観を楽しんでもらうことこそが表現としての没入感です。
ゲームの体験に没入させる
2つ目は、ゲームの体験そのものに没入させること。
例えばシューティングゲームや格闘ゲームなど、そのゲーム体験に集中する状態を作り出すことで、没入させることができます。
リアルタイムにゲームが進んでいくことで、ゲーム以外の他の対象を考える余地をなくし、没入させる状態を維持させることもできます。
世界観表現に没入させるよりも、本来のゲームに没入させる要件としてはこちらの方がメジャーかもしれません。
世界観表現の没入が”静の没入”とすると、ゲーム体験の没入は”動の没入”と言えるかもしれません。
ゲームの没入感は静と動の没入を組み合わせて表現しよう
例えば女性向けのアプリでイケメンと恋をするゲームの場合。
アイドルや学生、ファンタジー世界の住人など、そしてそれをどうビジュアルで表現するか。
それは静の没入の方でゲーム全体の世界観表現をしっかりと設計することで達成できます。
学生モノにするのであれば、文房具や学校のモチーフをUIにも取り入れることで、細部まで世界観を感じさせるゲームとして表現できます。
では動の没入、体験の方はどうでしょうか。
例えばキャラクターとの信頼度を徐々に上げていき、最後の報酬を得た瞬間。
比較的よく見る報酬だと、最高潮のシナリオ、アドベンチャーパートを見ることができる、もしくは新しいキャラクターのビジュアルやボイスを獲得できる。
その体験を得た瞬間はそのキャラクターとのシチュエーションを想像し没入させることができるはず。
UIデザイナーとしては、この瞬間をスムーズに達成できる設計が必要になります。
ゲームの没入感は意識して取り入れるべき大事な要素
どんなジャンルのゲームでも、2つの没入感を意識することでプレイヤーのゲーム体験を向上させることができます。
逆にいうと、これらの没入感がうまく表現できないとプレイヤーはそのゲームを継続してプレイしないでしょうし、ファンとしてその作品を愛することもないはずです。
ゲームのUIを設計する際に、各機能の重要度や頻度、工数感も考慮はするべきです。
が、そのゲームとして届けたいコアな部分ではしっかりと表現し、プレイヤーを没入させるべくおもてなししていきましょう。